物語

雫の音色♪ 3

「今が青春?」
誠二が聞いた。
……これが青春?
すると誠二が笑って言った。
「青春って聞くとさ、どちらかと言うと夕日に向って走るとか、夕日に向ってバカヤロー!って叫ぶとかさ・・・そういう印象があるけどね。」
「誠二の想像する青春って、夕日ばっかじゃん。夕日に向って走るって、青春っていうより熱血だし。」
僕も笑った。苦しいくらい笑った。
そうするうちに陽は暮れ、僕等はギターを背負いいつもの浜辺にいた。
誠二が浜辺へ歩く。
僕も誠二の後に続く。
「バカヤロォー!」
誠二は海に叫んだ。
「はい。これで青春じゃん!」
幼い笑顔で振り向く彼。
「一瞬だけかよ。」
「声続かないっつーの。何回言えば青春クリアなんだよ。」
「クリアとかないしっ!」
僕は彼の頭を軽く叩いた。
赤い夕日が彼の頬を照らす。
一定のリズムで波の音が聞こえる。
すると、隣から小さくハミングが聞こえた。
今日、僕らがステージで演奏した曲だ。
彼の歌声は羨ましいほどにしっかりと音程を捉えており、僕は彼の声に耳を傾ける。
気が付けばもう日は沈んでいた。
遠くの空はまだうっすらと赤い。
僕らの上にはもう一番星が光っている。
「帰ろうか。」
僕は言った。
誠二と僕は並んで浜辺を歩いた。
僕らの足跡だけが砂浜に残る。
僕等はお互いの家の方向へ交差点を曲がった。


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