物語

天使が舞い降りた日には* 15


 私はしばらく亜紀良さんの寝顔を見ていた。亜紀良さんの表情がこの四日間で少し明るくなった、そんな気がした。
 もうちょっと此処らへんを見て回ろう。夜の遊園地。メリーゴーランドの前のベンチに座る。すると、自分の上着のポケットに何か入っていることに気づいた。なんだろう?
 それをポケットから出すと、白い封筒が出てきた。便箋と連絡先が書かれたメモ用紙が入っている。中の便箋を開いて、亜紀良さんからと確信する。
『 彩へ 
 短い時間だったけど、楽しかった。水族館とか、遊園地とか大人になって行かなくなった場所にまた行って、結構昔は楽しかったって思い出した。彩に会う前、何事も上手く行かなくて、毎日、嫌だった。
 けど、彩に会って、最初は驚いたけど、そんな生活も楽しかった。
 もし、また彩に出会える日が来たら、僕は待ってるから。
また夜景、見に行こう。
僕は彩のことが好きでした。    亜紀良 』
 人の乗っていないメリーゴーランド。音楽に合わせ、馬たちが回っている。その後ろに見える大きな観覧車。イルミネーションで彩られ、頂上のゴンドラまで見えた。白い雪がまだ降り続いていた。寒いはずなのに、亜紀良さんからの手紙を見て、寒さなど感じなくなった。観覧車を見上げたまま、私は立ち上がり静かになった園内を歩き始めた。


 お互い逆の方向へ、もう振り返らず進み始める。この出会いは二人にとって良かったのか、悪かったのか、まだ知るすべもない。
 これが二人のたった五日間の冬の物語だった。

                                          【END・・・*】


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