少し行くとたくさんの洋服屋が並ぶ階に着く。彩に好きな服を買って良いといったが、彩は僕の申し出を断った。僕らの前を通っていく彩と同じくらいの女性たちは、綺麗な洋服で着飾り、化粧をして活き活きとしている。僕の隣に立つ彩はと言うと、たしかに彩は綺麗で、僕が今まで見てきた女性の中で最も美しい。でも、男性用の茶色の地味なジャケットと、下は白いラインが入ったスポーツ用の青いジャージでは・・・。 すると、僕らの今目の前に位置する服屋の茶髪の若い女性店員が彩を客と思い、彩に声をかけてきた。「こちらが最近の流行ですよ。」と、厚手の赤いチェック模様のスカートや、白いふわふわした短い上着、僕にはどこから頭を通していいかわからないような複雑なデザインの服。店員に話しかけられ、どう対応していいかわからずにおどおどとしている彩。僕はその店員に彩のコーディネートを任せて、彩の買物を待っていると、数分して、彩は店のロゴが入った紙袋を手に提げて、店から出てきた。彩の洋服代は思ったより安かった。 「ありがとうございます。」 彩は僕に申し訳ない、とでも言いたげな表情で僕を見上げた。僕はわざとその視線に気づかないふりをして、また歩き始める。 その後は適当に今日の夕飯になるお惣菜を買い、電車で帰宅したが駅には学校帰りの学生数人が下車したくらいでやっぱり人気は少ない。アーケードの中でギターケースを抱えた、あの青年二人とすれ違った。 家に着き、僕らは夕食をとる。 八時くらいに彩はもうソファの上で寝てしまっていた。彩の睡眠の妨げにならぬよう、僕はテレビの音を小さくして、ベランダに出てみた。今日は空に雲ひとつない。もうすぐ満月になるであろう月が遠くの空まで光を放ち、街を少しでも明るくしようと努力しているようにも見えた。冬の夜は静かだった。 しばらくリビングに寝転がってテレビを見ていたが、僕もいつの間にか寝てしまったらしい。でも、夢は見なかった。 [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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