物語

雫の音色♪ 6

あれから僕も倒れてしまったのだろう、気づいたときには病院のベッドに寝せられていた。
身体が重くて起き上がれない。
ぼやけた視界の中には白い壁と人らしき影。
そして、小さく話し声が聞こえた。
……事故。
そう確かに聞こえた。
さっきの光景がフラッシュバックのように斬新に蘇える。
僕は怖くてたまらなかった。
息が苦しくなり、身体が熱くなった。
目の奥が熱くなり、涙腺が緩む。
僕の様子に気づいた人が僕に声をかけた。
さっき話していたのは医者だったのか。僕は飛びつくように医者に聞いた。
何があったのか?
誠二は無事なのか?
誠二は今何をしているのか?
自分と同じようにこの病院のどこかにいるのか?
僕は立ち上がろうとした。
足を曲げ、ベッドの下に下ろし、床に足をつけ、体重をかける。
しかし、僕の足に力が入らずそのまま倒れた。
身体を動かそうとしても動かない。
「もう少し休んだほうが良い。力が入らないだろう?」
子供に言い聞かせるように医者が言う。
僕の息遣いは荒く、涙が止まらなかった。
注射を打たれると、身体は徐々に軽くなり、視界が暗くなった。
……ここは?
僕はどこかに立っていた。
周りを見回すと、そこはあの商店街だった。
雨の降る音が聞こえる。
「悠? 何やってるんだ?」
隣にいる誠二が聞いた。
「……いや。行こうか。」
さっきの事故は夢だったのか?
それとも幻だったのか?
そんなことはどうでもいいじゃないか、今誠二は僕の隣にいる。
僕は心から安心した。
「渡ろうか。」
僕は誠二の声で我にかえり、顔を上げた。
目の前にはあの事故があった横断歩道があった。
誠二が走り出した。
僕は急いで彼の背中を追う。
しかし、何故か距離は広がっていく。
車のスリップする音が聞こえた。
ガラスの割れる音・・・・・・。
僕の手にべっとりと血が付いていた。
……嘘だろ。嘘だろ!?
僕は目が覚めた。
……夢?
「大丈夫かい? 大分、魘されていたよ。」
心配そうに医者が聞く。
汗で服が身体に張り付いている。
部屋にかけてある時計を見た。
「……誠二に会わせてください。」
医者は首を振り、僕から目を逸らした。
「誠二は大丈夫なんですか?」
僕は怯えながら聞いた。
「今はまだ何とも言えない。」
「誠二は今、どうしているんですか!」
僕は大声を出していた。
「教えてください。お願いします。」
医者は躊躇しながらに口を開いた。


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